インタビュー課題
3年 小泉尚子
インタビュー課題のアートの分野の担当として、現代アートギャラリー&カフェ『CAI02』を訪ねました。お店自体に関することに限らず、現代アートの現状と今後の展開についてもお話を聞かさせていただくことが出来ました。
◆『CAI02』について
・住所 札幌市中央区大通西5丁目昭和
ビル地下2階
・電話 011-802-6438
・営業時間 13:00〜23:00
・定休日 日曜・祝日
地下鉄大通駅に直結したビルの地下にあり、店内は鉄筋コンクリートがむき出しになっているシンプルな内装でした。階段を下りると現代アートを展示するギャラリーが2つあり、別のスペースにカフェとしての細長いカウンターが1つ置いてありました。決して大きな店ではないけれどゆっくりとアートを楽しみつつカフェで休憩できる素敵な空間だと思いました。今回インタビューを受けてくださったのはCAI/有限会社クンスト代表取締役の端聡さんでした。端さんは、年少時代から絵を描くのがお好きで美術家になると決めていたそうです。店内にも端さんの作品が飾られていました。
◆この店を始められたきっかけ
そもそもCAIとはContemporary Art
Institution の略で1996年に円山に創設されたCAI現代芸術研究所という現代アートのギャラリーの2号店と言えます。しかしこの円山のギャラリーには芸術文化の愛好家など限定された人々しか訪れませんでした。広く開かれた新しいアートをする場を提供したい、愛好家だけでなく誰でも来ることができて、現代アートを楽しめる場所を作りたいという思いから、アクセスしやすい地下鉄大通駅直結したところに『CAI02』を創設したのです。カフェにはアーティストも来店するため、アーティストと市民の交流から一般の人々の考え方を反映した芸術美術の展開が考えられます。
◆どのようなアーティストの作品を展示しているのか
ギャラリーにはレンタルスペースと企画ギャラリーの2種類があります。レンタルスペースはアーティストが作品の展示場所をレンタルするもので、誰でも自分の作品を展示することができます。一方、企画ギャラリーはギャラリー側が展示する作品のアーティストを決定し企画するものです。円山の現代芸術研究所はすべて企画ギャラリーで、そこで企画したアーティストの作品をCAI02で展示したりもしています。
有名なアーティストだけを企画ギャラリーで使うわけではありません。CAIのスタッフの方々はドイツ・上海などにもよく視察しにいくそうで、現地で可能性のあるアーティストを発掘する場合もあります。札幌市内でも、若手のグループ展・個展やCAI以外のギャラリーに行って、有望な作家を探し歩いているそうです。
◆この仕事のやりがい
発掘したアーティストの成長を見るのが一番の楽しみだとおっしゃっていました。新しい作家を見つけ、道外・国外にも発表の場を広げる企画をして、作家の名前が少しずつ売れてよりよい作品を制作するようになり、やがては国際的に芸術展に選ばれる、この成長過程を見守るのが仕事のやりがいになっているようでした。円山のCAI現代芸術研究所ではアートスクールをやっていて若手のアーティストの育成にも力をいれていました。
ゴルフ界の石川遼選手やフィギュアスケートの荒川静香選手のように、日本人のアーティストの名が世界に知られるようになれば、おそらく日本人のアートに対する関心も強まっていくであろうから、アーティストを育成し世界に送り出すCAIの役割は大きいのだと思いました。
◆店のイメージ
鉄筋コンクリートがむき出しになっており上を見上げれば電気コードのようなものがぶら下がっていて、いかにも雰囲気のある店内でしたが、店内は何をイメージしているのか訊いてみました。すると、あえて言えば世界に発信できるプロセスを作るというイメージをもっているが、店は特に固定のイメージをもたないようにしているとのことでした。これは作家の作品の良さを十分に発揮させるためであり、作家が変われば空間が変わるようなギャラリーにするためです。CAI02は次々と展示する作品・アーティストが変わっていきますが、いつ来ても違った雰囲気・空間を楽しめるという点で非常に興味深かいお店だと思いました。
◆今後の展開
アーティスト発掘の現地視察のためによく行く、ドイツのブレーメンは人口25万人ほどの都市だが、現代アートギャラリーやギャラリー&カフェが約60か所もあり、美術館だけでも5か所あります。それにくらべて人口約200万人の札幌にはこういった施設はほとんどなく、日本全体で見ても欧米と比べたらかなり少数です。欧米にはレンタルギャラリーがなくすべて企画型であるから、ギャラリー側は作家を探して積極的に売り、世界に発信する姿勢であり、アーティスト側はギャラリーに自分の作品を置いてもらえるように必死に作品を制作するためアーティスト同士の競争が激しく、その結果よりよい作品が生まれます。それに対して日本は、芸術品のコレクターが少なく作品が爆発的に売れないため、9割がレンタルギャラリーです。言ってしまえばアーティストはお金があれば展覧会が開ける環境にあり、アーティスト同士の競争力を生まなくなっています。
今現在企画していることとして、平成25〜26年に札幌で国際芸術展(札幌美術展国際ピエナーレ)があります。今まで札幌で国際芸術展が開かれたことは一度もなく、この芸術展はかなり大きなイベントになることが予想されるため、端さんも張り切った様子でした。
来年か再来年にプレ企画として札幌ピエナーレプレとして道立近代美術館や市内数か所で同時多発的に展覧会を行う予定で、その際は舞台や音楽の芸術分野の作品も公開されるようです。
◆まとめ・考察
欧米比べて日本は人々と現代アートとの距離が遠く、一般の人々がアートに触れる場も少ないということが分かりました。また、レンタルギャラリーがほとんどであるため、アーティストは容易に自分の作品の展覧会を開くことができ、アーティスト同士の競争も少ないのが現状です。『CAI02』は一般の人々とアートとをつなぐパイプ役として、また現代アートの世界への発信地として重要な役割を担っています。 今後札幌でも、現代アートを活発にしていく動きに期待したいです。